何て歌ってるのかわからないけど多分良いこと言ってる気がする

ハタチになった記念に何かしようと思い、近所にある銅像を毎朝触ることにした。十年が経って三十歳になった。友達から合コンに誘われてそこで出会った鬼ギャルに「俺毎朝近所の銅像触ってます。」と話すと、鬼ギャルが爆笑して「なにそれ、私も触りたいんだけど〜↑卍卍卍」と言ってきて、翌朝一緒に触りに行くことになった。その子と付き合って、月日は流れ、その銅像の下でプロポーズをして結婚することになった。

という話があったとしたら、銅像を触ることと結婚がイコールで結ばれている。「結婚する」ということを目標にすると偉い大きなものに思えるけど、「銅像を触る」を目標にしたら全然楽に思える。銅像触るだけでいいんだから。多分何でもいいから小さいことずっと続けとけば何かしらおもしろい感じになるな〜と気付いて、「塵も積もれば山となる」という言葉の本質が実感として染み込んだ六月でした。遅い!

もうすぐ二十四歳になります。二十四歳はやばい。大人すぎる。小学生の時ハンターハンターの幻影旅団編のところを「こえ〜〜〜、怖すぎる……」と思いながら読んでいたら母親から「そぎゃん気持ち悪かつば読まん!勉強しなっせ!」と頭蓋骨をぶん殴られていましたが、結局勉強はしなかったし、未だにハンターハンターの最新刊を買うたびにワクワクしながら読んでいる。幻影旅団よりも二十四歳の方が怖い。ハンターハンターが完結する前に死んでしまうのは絶対に嫌だからもし俺のことを狙っているスナイパーがいたらどうか手元が狂ってほしい。お願いします。手元が1ミリ狂ったら俺のところに弾が届く頃には1メートルズレる。塵も積もれば山となる。スナイパー、お前は人の命を狙ってないで就職しろ。毎日銅像を触れ。殺すぞ。

 

コタちゃんは俺よりも年齢が二個下だけど音楽にとても詳しくてバイト代をはたいてはブルーノートに足繁く通って壮年男女に囲まれながら一人でJAZZを嗜みつつアークロイヤルを吸う格好良い九州男児。コタちゃんは二十二年間、俺は二十四年間、みんなと同様に色んな人から色んな話を聴いてきた。コタちゃんと一緒におもしろい人からおもしろい話を聴く時も何回もあった。コタちゃんは誰よりも受け皿が広くて、「価値観の多様性を認めようぜ」という刺青を顔面に入れているこの俺でさえもムカつくような瞬間に、コタちゃんは飄々と微笑んで煙を燻らしたりしていた。ただ鈍感なだけじゃなくてちゃんと受けている感じがするから凄いな、と思っていたら今日も「しんちゃんローラ・マーリング好きだと思うよ」なんて聴いたことのない音楽を教えてくれたりする。
https://youtu.be/3fgyr7-RciE


髪の毛を真黒に染めた。片想いが変質してわけがわからなくなったウイルスに長い間髪の毛を金色にさせられていた。治りました。完治です。先生。処方箋燃やした炎でコタちゃんとアークロイヤル吸う。

トークイベントに出ます、と勢いで紡いだ文

仮免4回落ちてる友達が運転するレンタカーの助手席に乗った。ウインカー出さずに右折したり、赤信号で「これ行っていいやつ?」と聞いてきたり、道路の中央線またいだ状態でずっと直進したり、とにかく元気だった。海に行きたかった俺たちは首都高で道を間違えまくって、下道でも道を間違えまくって、「運転変わりますわ」てカッコつけて言った俺も四年ぶりの運転で手が震え、気付いたらレンタカー屋さんに車を返却していつもの場所で「いつか海行きたいね」と言いながらお酒を飲んでいた。仮免4回落ちてる友達の家に泊まりに行ったら部屋に見たことないぐらいドでかいサイズの『スタンド・バイ・ミー』のポスターが貼ってあった。B1とかB2とかより全然でかいやつ。そういう規格に当てはまらないオリジナルのでかいサイズのやつ。仮免4回落ちてる友達はMacbookAirにヘッドホンを接続させて一人でAVを観だしたので俺は一人ですぐ寝た。朝起きて「ベランダでたばこ吸おうぜ」と言われてベランダでたばこを吸った。「部屋で吸わないんですか?」と聞いたら「父ちゃんが癌のステージ4なんだよ。だから中では吸わない」て言ってきて、ずっとふざけてる人がこういうマジのやつ言ってくる瞬間っていうのは何回味わっても心臓がドクドクなるものだった。
海リベンジのためにクサカベくんに運転してもらって熱海に行った。クサカベくんはむかし金髪で無口なデリヘルの運転手役を演じたことがあって、(『若者よ』というとても良い映画)クサカベくんに全部運転を任せて熱海に行った。魚を釣って唐揚げにして食べた。根暗が四人集まっていたので全員日焼けしまくった。

赤目四十八瀧心中未遂を読んだ。「嫉妬」という漢字に「へんねし」とルビがふってあった。「しっと」て言うよりも「へんねし」と言った方がべたつき感あって嫉妬っぽくて良いじゃん、と思った。

髪の毛を後ろに流すことを覚えたいと思った俺は髪の毛を後ろに流そうと整髪料で髪の毛を後ろに流す日々。髪の毛を後ろに流して柄シャツを着てビニール袋に荷物を入れて生きているその表層だけ捉えると気合い入った人のように見えるかもしれないけど、実際はやけくそというか、感情を追いかけることに疲れてめんどくさくなった成れの果てだ。例えば赤のモヒカンに全身刺青だらけの人がいたとして、その人が気合い入った男気的な方向からのアプローチの人間なのか、ただ単に友達に罰ゲームでやらされて「もういいよ、やるよ」って言ってやった人なのかは判別がつかない。前者は気合いで後者はやけくそ、に質感が近いと思った。思ったが、まぁでもやけくそでも赤モヒカン全身刺青は気合い入ってるか。気合いの入った人が好きで身の周りの友達は皆気合いの入った人間だけど、じゃあ俺はどこで「こいつらは気合いが入っているな」と判断したのだろう、などと考えていたら財布を忘れたままルノアールに入ってアイス黒蜜ミルク(大好き)を注文したところで財布を持ってきていないことに気付いて、「すいません……あの…帰ります」と、ピンポンダッシュ的なアイス黒蜜ミルク注文ダッシュを敢行してしまい、今は新宿の路上でぼーっとしている。暑い。気合いの話とか本当にどうでもいい。ただずっと外見と内面のズレは自分にとって永遠のテーマとなっていて、悩みすぎて今はもう無茶糞になっているだけなのでした。とにかく外見で恐怖感というか高圧的なイメージを与えるらしく、確かにそういう部分は内面にもあるにしろ、ただそれだけではないので、柔和な面も表さなければと試行錯誤を繰り返した結果気色の悪いベタついた笑顔を見せ続けるなど、間違った方向でのアウトプットを何度もやってきました。冷血人間に見られるので、一回冷血っぽい感じも提示しつつ本性をフェードインさせながら会話する、みたいな器用すぎる真似は到底できませんし、今はもうよくわからないので何も考えていません。ただただ思ったことを口に出すだけの装置と化したことで結構楽になってきたな〜〜〜新宿の路上暑いよ〜〜〜

「金髪の女の子主人公で、弓道部に入ってるんだけど、周りはみんな全国大会とか行くぐらい強い部員たちで、みんな的の真ん中に当てるために毎日練習してるのに、その子だけ矢のスピードに超こだわんの、とにかく速さ、速く矢を射れればなんでもいい、みたいな子。その話書きたくてさ」とクサカベくんに喫茶店で話して、今そういう話を書いています。書きたいことが明確にたくさんあるので、多分そこを曲げるのをしんどく思ってしまうから、一生バイトしてでもちゃんとしときたいです。

二十三歳になって猫が好きになってきた。かわいい。毛がふわふわしていますね。よく行く喫茶店に猫が2匹いる。最初は頭を撫でたり触りに行こうとしていたが、様子を見るにつれ、「あれ?なんだ…精神的にがっちりとマウントを取られている気がする…」と思い、媚びるのをやめた。対等に見ていなかったのです。反省しました。友達だもんな。友達の頭撫でたりしないもんな。同じ空間にいるだけで充分でした。反省しました。ほぼ毎日行ってるけど、一ヶ月に一回ぐらい横で寝てくれます。お互い媚びずに付き合えることを気持ち良く思います。

 

トークイベントに出ます。漫画家の吉田貴司先生が描いている『やれたかも委員会』の出版記念イベントです。chelmicoレイチェルも出ますので是非来て下さい。人前に出るの初めてなので、緊張しつつも、楽しみです。
https://note.mu/yoshidatakashi3/n/na62674cc793b

十二時間ぐらいアルバイトをして、疲れたな、と思いながら金曜の終電間際の総武線地獄行きに乗ってバイトするために生きてるみたいになってるな、と思いつつノラ聴いてて、ノラのライブを友達と観に行った帰り道、友達が「人間として生きている以上、生理的に絶対的なパワーで『素敵』と思わざるを得ない、みたいな声だったね」と言われ、確かに、と答えたのを思い出した。武道館から歩いて神保町のボンディに行って甘口の海老カレーを食った。うまかった。

一番変な友達と久しぶりに会ったら「最近金だわしで尻をゴシゴシ洗うのにハマってんだよな〜」と言っていた、いつも通りで安心した、「LINEに入ってる女の子全員に毎日連絡して隙あらば抱こうとしてる」と言っていた、いつも通りで安心した、長いこと彼女と同棲していたけど最近別れていた、「歯ブラシが一本になってた時がしんどかったね」と言っていた、別れた元カノとララランドを観て泣いたと言っていた。
自分含め身の回りの男たちの好きとか嫌いとかの話がだいぶごちゃごちゃしている。友達関係から恋人関係へと発展させたいけど勇気が出ないとか、デートに誘ったけど相手が待ち合わせ場所に来なくて四時間待ったけど結局来なかったとか、金だわしで尻をゴシゴシ洗うのにハマっているとか、でもみんなちゃんとしんどいしんどい言いながらも頑張ってるのが滑稽さと切なさに拍車をかけている。金だわしで尻をゴシゴシ洗うのにハマってんじゃねえよ。

夏が来そう。くそモテないし会話が下手くそすぎて爆発寸前の底辺ミニシアターアルバイターたちは今日もスクリーンから漏れてくる音を聴きながら「各駅停車の電車に乗って一駅一駅全部降りるやつやろうぜ」と謎の約束をする。そのスクリーンに映りたかったり、そのスクリーンに映ってるものを作りたくて山や川に囲まれた土地から集まってきた男たちだった。
映写室の暗闇で親の仇レベルでセブンスター吸い込む日々を何にも繋げられなかったらその無力さにクソブチギレてやろうと思う。

ラップユニットをやっている女の子二人と仲良くなったのでライブを観に行った。ライブハウスの一番後ろで壁にもたれかかってライブを観ていた。褒め殺し的な感じになったら申し訳ないけど目の前で命削って戦ってる二人を観て、なんか生きててよかったなみたいな変な境地になってふわふわしながら観ていた。数年前の自分と今の自分が地続きになってることを明確に自覚する瞬間「うわ〜〜〜まじで〜〜〜???」てなる。

バイトの休憩時間で絲山秋子さんの『離陸』をちまちま読み進めて、全然読み終わりたくない感じになっている。

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機械たちが行かないでって言ってるんじゃないですか

やる事無さすぎて映画を観まくったりラジオにメール送りまくったりしていた2013年あたり、町田のベローチェコーヒーでよく一緒に190円のコーヒーを飲んでた。

本多劇場でそいつがボロアパートの一室の窓を開け、「僕の景色…僕の街…」みたいなことを言って始まった。二時間四十分後、また友達が同じ窓を開け、「僕の景色…僕の街…僕の……」、暗転、明るくなったら真ん中で頭を下げていた。へむへむ言いながら泣いていた。忍たま乱太郎に出てくるあの白い犬だ。
良くも悪くも世界が閉じてるタイプの田舎で育ったので、東京に出てくるのなんて僕とそいつだけでした。
平日なのにほぼ満席の本多劇場の真ん中で頭を下げてるそいつを見て一気に色んな場面がフラッシュバックして、へむへむ言いながら泣いていた。忍たま乱太郎に出てくるあの白い犬です。天才てれびくんは木曜日だけ生放送だったから木曜日が嫌いでした。全然関係ないけど。
『カルテット』の最終回の日、いつものようにアルバイトをしていた。「バイトやめてえな〜いらっしゃいませ〜」て言いながら働き、帰り道、泥酔したババアが近付いてきて何か言ってる。イヤホンで音楽聴いてたから外して「え、なんですか?」と聞いたら、「顔かわいいからこれあげる!!!!」と叙々苑の袋に入った傘を渡された。傘持ってるから全く要らなかったけど、「あ、ありがとうございます」と言って受け取ったらババアが「ばいばい!!!」と満面の笑みで手を振ってきたから凄い大声で「ばいばい!!!!!!」と言い返した。家に帰ってカルテットの最終回を観て泣いた。お客さんが帰っていく中演奏し続ける四人が最高すぎました。

 

先輩映写技師お姉さんが泣いていた。
「映写技師が止める時は普段起きない機械トラブルが起きちゃうんだよ…」と言っていた。
現に映写機から映像が出ないというトラブルが起きていた。映像が出ない映写機はもうただの熱い箱でしかないから馬鹿です。今までやめていった人達の時も最後にはそういう謎トラブルが起きていたらしい。霊感とか皆無だけど映写室が神聖な場所だというのは初めて入った時から肌でわかった。先輩映写技師お姉さんだけが泣いててそれ以外全員が笑ってたらしい。その話を聞いて、あ〜〜〜〜と思った。
先輩映写技師お姉さんがやめたあと、年下の女の子もやめた。最後に会う日コンビニで買ってきたパウンドケーキをくれた。付箋が貼ってあって、「人生ムリしてたのしんでください。」と書いてあった。そんなに話したことなかったけど色々見抜かれたいたんだな、と思った。完全に根っこ刺してきてる凄い言葉だった。人生ムリしてたのしんで下さい。刺青にして顔面に彫った方がいい。

明日はキングコングを観ます。みんな、俺明日、キングコング観るんだ。

疾風の乱痴気、腹黒の生意気、人間の生活、先輩映写技師お姉さん

腹黒の生意気を観た。

感想を書く。ネタバレしまくりますのでまだ観てない人は今すぐiPhoneを井戸の底に投げましょう。

 

『Haraguro no Namaiki』
『ブルーフォーブラッフォーガングリフォン』と系統的には似ている、感覚のみで最初から最後まで一本線通すタイプのネタでとても好き。変なネタ。
会話が締まらない、というか締めない。

H「でも腹黒ってそういうのじゃないから」
S「そうなんすか?」
H「そうなんすか?じゃねえよ」
S「はっはっはっはっ 腹黒い、で、タヌキ、思い出しちゃいました」
H「なーに言ってんだよ」

主に設楽さんが会話を収束させない、ズラしてズラしてどんどんスライドさせていく。演技力。
設楽さんの怖い部分は、よく言われるドS的な、首刈りビンタやカラーバットフルスイングみたいな部分じゃなく、こっちの混沌としたトリップ感満載の感覚的な部分だと僕は思っています。

 

『cuckoo costume party』
このライブの中で一番好きなネタでした。
バナナマンらしい、二人の会話メインで背景にある物語を進めていくやつ。
二人が席立ってメシ食わずに話しまくってるの見ると、「こいつらメシ食えよ!大人二人で何やってんだよ!」のおもしろも乗っかってくる。『Happy Birthday』とか『old man』みたいに役と本人のバランスがとても絶妙で、途中日村さんが普通に「ちょっと待ってよ設楽さん」て普段の呼び方しちゃってて、結構素に近いテンションでやってるのかな〜なんて思ったり。映像の分野でも会話を極めていくとだんだん効果的な即興演出が用いられるのと同じかもしれないな、と思ったり、あとやっぱりあのオチは爆笑。緻密さと乱雑さの共存、バランス。

 

karaoke
顔芸でもありカメラアングル芸でもあり繊細な間合いの芸でもあり、超笑った。イントロ流れてきて設楽さんがマイク取って歌い出すまでのあの感じとか、演技力の極みというか、こんなのこの二人にしかできんな〜と素人ながらに思った。あと日村さんの完全に無の顔がもう完全に無で、無すぎて笑う。サビ前に「ドゥクドゥンドゥンドゥン」とか言うなよあいつ!そういうのやめろ!歌ってる時点で変なのにドゥクドゥンドゥンドゥンってなんだよ!

 

『panic Attack』
設楽さんの悪口の鋭利さが凄すぎる、引く半歩手前ぐらい鋭い、それを受け止める日村さんの「そうそうそう!それでいいのよ!」の流し方、対立構造、精神的にどっちが優位に立てるかのマウントの取り合い。設楽さんの髪型がおもしろすぎる、似合ってなさが絶妙、でもいるな〜こういう髪型の人、と思って、その髪型のチョイスからして、着眼点がやっぱり凄いな〜と思った。

 

『赤えんぴつ』
二曲やったのって何年振りだろう。わ〜〜〜二曲やるんだ〜わ〜〜〜と思った。「お前クスリやってんだろ!!!!」「お前だよ」はもう無形文化財ですね。曲もやっぱり良い。ギターで耳コピして家で一人で弾きます。

 

『The pitiful two in the philippines』
バナナマンの単独といえば、物語性が一番強いラストのコント。総括的な感想になるけど、最初のネタから最後のネタまでが、綺麗なグラデーションになってる。毎回そうだけど、今回はそのグラデーションがより綺麗というか、振り幅が凄い。今回も色んなパターンの「おもしろい」がある。観てる方が色んな感情を使うので飽きない、そして「わ〜〜〜、良かったな〜」と、とにかく幸せな気持ちになります。良かった。腹黒の生意気。バナナマンは凄い。この忙しさの中こんな凄いものを創っているわけだから、設楽さんと日村さんとオークラさんに丸々一年ぐらい単独のための休みを与えたら一体どうなるんだろう。
以上。

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話変わって。個人的な話。
先輩映写技師お姉さんが映写をやめることになった。
理由は詳しく書けないけど、ハッピーな退社ではなく、むしろ反対で、本人は「敗走だね、仕方ない仕方ない」と言っていて、仕方ないという言葉に俺達は何敗してきたんだろうと思った。「仕方ない」のパワーによって無理矢理捨てられた感情達を、無理矢理捨てられた事にも気付けないぐらい大人になってしまっていた。
ホン・サンスという韓国の映画監督がいて、先輩映写技師お姉さんも僕もその監督の映画がとても好きだった。ホン・サンスの映画はこうでこうで、ここがこうなってて、みたいな話をすると、「流石脚本家だね〜、観方が正解だよねそれ〜」とか言ってくれたり、まあとにかくホン・サンスの話をしまくった。TIFFホン・サンスの新作を観て、「最高最高最高最高最高最高最高最高最高😭😭😭😭」と二人で言いまくった。
映写技師という存在は技術が進歩するごとにいらないものとなっていくのは確かです。最後の生き残り僕らは映画の神様から愛されていた。相思相愛。
ホン・サンスの映画みたいに、先輩映写技師お姉さんがやめなかった未来が自分の横を歩いてる気がします。というか歩いてます。
やめざるを得ないという報告を受けた時、「映写室には私の先輩達の代から個性が強い人がたくさんいて、◯◯くん(俺の名前)もそうだけど、自分できちんと頭働かせて作った独自の考えみたいなのを持ってる人がいて、そういうのがぶつかる(混ざり合う)のが人間の生活だと思うから、二十代の時にそういうの我慢してきたからさ、もうしたくないかな……」て言われて、こりゃ泣くばいと思った。泣いたら変なんなると思って超耐えたけど、人生の先輩から言われる『人間の生活』という言葉がとても重くて、持てない、と思った。重くて持てなくてずっとそこに置いてあるから忘れない。動かない。

 

「次どこで働くとか決めてんすか?」
「まぁ…私文章書ければそれでいいし、コールセンターでもなんでも…」

 

死ぬまで映写室にいてほしいです。
馬鹿力のヘビーリスナーで、読まれた時にはすぐさま「今読まれてたね!」と光の速さでLINEを送ってきてくれたりした。最後に会う日、俺が持ってる馬鹿力カード全部あげよ。

リノリウム色心臓

僕が一方的に想いを寄せている人がポニーテールになっていた。

今まで「ショートカット以外無価値ばいあぎゃんと、なーんが馬の尻尾かいて、茶色くてこぎゃんくるくるしとっとも全然意味がわからん」て熊本弁200%で映写室の横でゴールデンバットを肺壊しの勢いで吸いながら言っていたけど、その人のポニーテールは二兆点だったので、最近ガスを止められた年下の友達に「あの人のポニーテール見た?あれ二兆点ポニーテールじゃない?」と聞いたら、「確かにかわいいね。乗りたい?」と聞き返された。

馬としてだ。

馬として乗りたいかだ。

ポニーテールだから。

考えたことなかった。好きな人が人ではなく馬だった場合、果たしてこれ乗りたいのですか?なんか全然意味わかんないけど乗りたいな、と思った。乗馬の経験ないけど、俺は小学生の時毎休み時間図書室で三国志を読んでいたので多分大丈夫、関羽とか趙雲の雰囲気は掴めている。「乗りたいね。一点賭けしてくれよな」と言った。そうなると競馬じゃんて自分で言っといて思った。

「一方的に想いを寄せている人が人ではなく馬だったら」という次元にまでたどり着きました。どうだ。ついてこれるか。狂気の先にある無風の大草原。ここは空気が綺麗です。モンゴル。出口塞がれた感情達が行き着く先はモンゴル。草原を馬が走ってる。その馬にも乗ろうかね。はい怖い怖い。終わり終わり。

 

 

夏目漱石のこころを読み終わって激烈に感動した。遅すぎる。でも凄い話したい。あれ、やっぱ先生死んだんすかねー、死んでないと思いたいな。主人公のこれからと奥さんのこれからを思うと、絶対に先生生きといてくれよな!と思って大号泣。

 

油断するとすぐ映画を観てしまうので、今年の目標は映画を観ずに別の作業に時間を回す。たくさん観たところで意味ない。とか言いながら今月もしっかり20本ぐらい観てて、「おい!!!!!!💢💢💢💢💢💢💢💢意味ないて!!!!!💢💢💢💢💢馬鹿かよ!!!!!!!💢💢💢💢💢💢」と空気をぶん殴りまくった。本当に気をつける。本をたくさん読む年にする。残された時間は限りなく短い。

 

 

annkwを聴きながら渋谷駅の明日の神話を見ていた。こんな絵だったっけ、と思った。

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昼休みに校庭でバスケをしていた。

高村くんは身長が2メートル3センチあるので、104対2でこっちのチームが圧勝していた。こうなるともうチーム決めのじゃんけんで高村くんを取った方が絶対に勝つので、昼休みの間ずっとじゃんけんやっとけばいい。

高村くんが106点目をダンクした時にちょうどとんちゃんが校庭に入ってきた。

「タイヤ汚れるよ」と大福が言った。

とんちゃんは大福を無視してヨダレをだらだら垂らしながら「校長が呼んどるばい」と言った。

「え、なんで?」

「校長が呼んでた」

「それ聞いた。理由理由」

「ソックタッチ盗んだでしょ、山田、へへ、へへ」

「は?盗んでないよ。」

本当は盗んでいた。昨日の夜。

「ソックタッチ窃盗団なん?お前ら」

と言ってとんちゃんは帰っていった。

玄関でくつを脱いで上ぐつに履き替えていたら、廊下に泥で出来たタイヤの跡が見えた。

大福が「うわやっぱ汚れとるじゃん、めんどくさっ」と言って、「すぐ行くからお前ら先行っといて」と大福はひまわり学級の方に走って行った。

校長室に行く間、あんぱん坊やと高村くんとどうしようかと相談した。

「ていうか何でバレたん?ありえんくない?山田お前チクったど?あんま乗り気じゃなかったし」とあんぱん坊やが言った。こう見えて結構乗り気だったので「チクってない。」と言った。素直に謝るか、しらを切り通すかであんぱん坊やと高村くんが言い合いになっていた。

夜の十時に校門の前に集まった時、大福は上下迷彩の服で、あんぱん坊やと高村くんと俺はTシャツにサンダルだった。

あんぱん坊やが「は?なんで迷彩?」と聞いたら大福は「うるしゃー、殺すぞ」と言った。恥ずかしそうだった。

高村くんが脚立係で、家から六メートルの脚立を持ってきていた。高村くんも高いし、高村くんが持ってる脚立も高いし、なんかもうわけがわからなかった。

脚立を使って三年八組のベランダに侵入して、カギを開けるために俺がガスバーナーで窓ガラスを溶かしていたら、あんぱん坊やが「いやもう遅っ」と言って、持ってたカナヅチで普通に窓ガラスを割って手を突っ込みカギを開けた。

放課後にみんなで帰っている時、あんぱん坊やが「理系のクラスにおる広瀬すず朝青龍混ぜたみたいな顔の女の子の名前知らん?」と聞いてきた。

広瀬すず朝青龍て混ざると?」

「いや知らんけど、そういう感じの顔」

「それヤマノベさんじゃにゃー?」と大福が言った。

俺達は文系だったので、反対棟に教室がある理系の人達とはほとんど接点が無かった。それでもあんぱん坊やはヤマノベさんに告白をした。ヤマノベさんは「告白ってあんぱん食べながらするもんじゃないと思う」と言ってあんぱん坊やを振った。

駄菓子屋をやっている大福の家に集まってその話を聞いた時、大福と高村くんと俺は「こいつあんぱん食いながら告白しとるじゃん」と思った。思ったけど三人とも言わなかった。そこから話がうにょうにょと進んでいき、気付いた時には大福が「じゃあヤマノベさんのソックタッチ盗もうか!」と言っていた。あんぱん坊やは泣いていて、高村くんは寝ていた。

三年八組の教室に入ったはいいものの、ヤマノベさんのロッカーがどれかわからず、しかもロッカー全部にカギがかかっていたので大福が一回家に帰ってハリガネを持ってきた。

大福が家にハリガネを取りに行っている間、あんぱん坊やと高村くんと「地球で一番強い動物は何か」の話をした。高村くんが「麒麟」の一点張りで、あんぱん坊やが「いや麒麟なんか足元ガラ空きばい!カバとかライオンが噛みついたら一撃だけんあんなやつ」と言っても高村くんは「いや、麒麟、高いから」とそれしか言わなかった。

ロッカー全部のカギをハリガネで開ける作業は朝までかかった。しかも一回開けてヤマノベさんのロッカーじゃなかった場合もう一回カギをかけなくちゃいけないので、ヤマノベさんのソックタッチを手に入れた時にはもう朝の六時を過ぎていた。それが夏休みの初日だった。

大福の家に帰って夜まで寝て、起きて、四人でカップラーメンを食べていた。あんぱん坊やが「俺ソックタッチ食うわ」と言って、ソックタッチの先端を果物ナイフで切って、カップラーメンの中に入れてスープと混ぜた。麺を啜ったあんぱん坊やは、「直接食えばよかった」と言った。「残りやるよ」とソックタッチを渡されたので、俺と大福と高村くんも果物ナイフでソックタッチを切ってスープに混ぜた。クソまずかった。俺と大福と高村くんは吐いた。あんぱん坊やはずっと静かに泣いていた。

校長室のカレンダーがまだ八月になっている。ああいうのすげえ気になるな、昨日の時点でもうめくっとけよ、と思っていたら大福が入ってきた。校長から「なんでお前だけ遅れたんや」と聞かれた大福は「とんちゃんの車椅子のタイヤ拭いてました。」と言った。それじゃ説明不足だよと思った。

とんちゃんは二十五歳で死んで、大福は実家の駄菓子屋を継いで、高村くんは下水道の修理をしていて、あんぱん坊やは検察官になった。俺は東京でアルバイトをしながら一人暮らしをしている。