「お前らが女の子とよだれ垂らしながら遊んでる間に俺はサリンジャーとか太宰とか読んでるし、永遠にアホみたいな顔面で意味の無いことに時間を費やしとけやカス!」と思いながら三年間高校生活を過ごした。人生で初めて女の子の部屋に入った時、その子の本棚には岡崎京子山本直樹の漫画が全作品あって、端っこに『ライ麦畑でつかまえて』があった。手に取って裏表紙を見たらバーコードが透明のテープで貼ってあった。「なにこれ?」て聞いたらiPhone4をイジりながら「図書室から盗んだ」と言っていた。それから二年が経ってバナナムーンで初めてメールを読まれた時、その子は台所で皿を洗っていた。「設楽さんにラジオネーム呼ばれた」て言ったら「へー、凄いね」て全然興味なさそうだった。



映写窓からダムドのドキュメンタリーを観ていた。キャプテンがお客さんからペットボトルを投げられて怒っていた。「次投げたらライブをやめる」と言ったらまた投げた客がいて、ダムドは楽屋に戻っていった。スタッフがペットボトル投げた客を突き止めてライブハウスから追い出して、ライブが再開した。ステージに戻ってきたキャプテンがブチギレながら「俺はただお前らと楽しみたいんだ」て言った瞬間俺の涙腺がぶち壊れて涙がハイドロポンプみたいな出方をしていた。圧倒的な優しさを持ってないと優しいことと優しくないことの境界線がわからないから他人に酷くすることもできないし、本当のパンクスたちはその境界線を知っているからこそ、だと思う。あの人たちは物を壊しながら自分を壊しているし、正当な復讐をきちんとする。相手が一番嫌がることをする。頭が良くないと不良にもなれないぜ。



終電集合で夜中に遊ぶことが増えた。毎日大学の図書館でレーザーディスクゴダールとかトリュフォーを観ていた四年間が嘘のようにきちんと友達ができた。夜が明けるまで『ライク・サムワン・イン・ラブ』を観た。観れば観るほどおもしろさが倍増していく。「明日こそは寝るぞ〜」と毎日思っている。何やるにしてもブチギレながら「俺はただお前らと楽しみたいんだ」て言えるぐらい気合いは入れておきたい。それが例えば無賃乗車だとしても、近所の犬を逃がすことだとしても、竹馬だとしても、ボトルシップ作りだとしても
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